醸造所や料飲店向けに、クラフトビール流通に関わるデジタルトランスフォーメーション(DX)サービスを提供する Best Beer Japan(以下、BBJ)は29日、プレシリーズ A ラウンドで2.1億円を調達したことを明らかにした。同社にとっては、2018年7月のエンジェルラウンド、2021年2月のプレシードラウンド、2022年2月のシードラウンドに続くものだ。
今回の資金調達には、KURONEKO Innovation Fund(ヤマトホールディングス=東証:9064の CVC、グローバルブレインによる運営)、ぐるなび(東証:2440)、埼玉りそな創業応援ファンド(PE&HR による運営)、アグリビジネス投資育成が参画した。これにより、同社の累積調達額は3億円を超えた。PE&HR は前回ラウンドに続くフォローオンでの参加。
BBJ は、クラフトビール醸造所向けの業務支援ソリューションを提供している。主な事業として、醸造所のバックオフィス業務を88%削減する管理ソフト、送料を半減できる樽のシェアリングサービス「レン樽」、クラフトビール販売店が全国200以上の醸造所から一括購入できる B2B クラフトビールプラットフォームを展開。2023年7月にリリースしたプラットフォームは、月間33%の成長率を記録している。
創業者で代表取締役の Peter Rothenberg 氏は、2026年の酒税法改正を見据え、「アメリカのようにクラフトビール市場がビール市場全体の約25%を占める日が来ると信じている」と、業界の将来性に意欲を見せた。クラフトビール市場は現在1,250億円規模で、今後さらなる成長が期待されている。Best Beer Japanは、業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードし、醸造所の事業拡大を支援する方針だ。
拡大するクラフトビール市場
2015年以降、クラフトビールメーカーの数は3倍以上に増加し、市場規模は成長基調にあるものの、多くの非効率的な課題に直面している。醸造所、クラフトビール販売店は共に小規模ビジネスであるため、情報収集や発注が複雑で、商品や請求書が散在し、生ビールの樽の往復オペレーションも非効率的だ。多くの事業者はいまだに紙と Excel で業務を管理し、アルコール関連の厳格な税務管理に多大な時間を費やしている。
対照的に、アメリカではビール市場の25%以上がクラフトビールであるのに対し、日本はわずか1%未満。この状況は、日本のクラフトビール市場に大きな成長の余地があることを示唆している。この課題に対応するため、BBJ は SaaS プラットフォームを開発した。BBJ は現在は4名のフルタイムメンバーと、業務委託を含め10名程度で運営されている。
Rothenberg 氏によれば、今回の調達の目的は、非専門店アプローチの仮説検証のためだという。クラフトビール専門店でクラフトビールが売られているのは当然だが、さらなる需要を見込むには、非専門店の飲食店にアプローチする必要がある。商品の十分な回転率が得られるのか、店舗が既成ビール製品ではないクラフトビールの取扱に興味を持ってくれるのか、物流大手のヤマトホールディングスや、飲食メディア大手のぐるなびの協力を得て開拓するわけだ。
同社は将来、クラフトジン、ウイスキー、ワイン、日本酒などの流通開拓にも事業領域を拡大する計画も持っているという。既存のプレイヤーとの協業も視野に入れ、業界全体のデジタル化と効率化を推進しようとしている。先に書いた酒税法改正も考えれば、BBJ が取り組むクラフトビール業界の DX は、中小規模の醸造所や飲食店にとって大きな転換点となる可能性が高いと言える。
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